彼に殺されたあたしの体
あたしは過去に自分のお腹の中にも赤ちゃんがいたと、思い出していた。


女の子かな?


男の子かな?


そんな些細な会話すらする暇はなく、あたしも赤ちゃんもこの世から消えてしまったけれど……。


もし、あたしと先生もこの夫婦のような会話ができていれば、きっと今幸せになれていただろう。


多少の困難はあると思うけれど、家族3人で暮らせていたかもしれないのだ。


もう二度と手に入ることのない未来に、一瞬だけ悲しみを感じる。


同時に、夫婦をうらやましいと感じた。


あたしはすぐに思考回路を遮断し、そして絵を描き始めたのだった。
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