彼に殺されたあたしの体
桜
再び土の上が騒がしさを取り戻したのは、モグラに会って数時間後の事だった。


家の前に車が停まりいつも通り旦那さんが戻ってきたのかと思ったら、なかなか家の中に入ってくる気配がない。


耳をすませて待っていると、車を降りる音が２人分聞こえて来た。


その瞬間、あたしの胸がざわめくのを覚えた。


帰ってきたんだ。


奥さんと赤ちゃんが、この家に帰ってきたんだ。


「さぁ、桜ちゃん。この家があなたの家よ」


奥さんの優しい声が聞こえてくる。


桜ちゃん。


きっと子供の名前だろう。


「ちゃん」と呼んでいるから、女の子で間違いなさそう。


そして鍵を開け、玄関を入り、リビングへと入ってくる音。


あたしは自分に近づいてくる赤ちゃんの存在に、ドキドキしていた。


今までお腹の中にいた赤ちゃんが外の世界に出たんだ。
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