彼に殺されたあたしの体
そんな存在はただただ大人しくしているのが1番なのだ。


そう言う思いにたどり着いてから、あたしは絵を描くことも滅多にしなくなっていた。


頭の中でどれだけ色彩豊かな絵を描いたって、目の前には真っ暗な土しかない。


どれだけ美しい絵をかき上げたとしても、それを他人に見てもらうこともできない。


すべてあたしの頭の中にしか存在しない事だから、自分でその絵に触れる事さえできない。


そんなの、やっぱりあたしの感情同様に無意味なものだと思えてきてしまった。
すべてが空虚。


目の前にいる虫と家の中の物音だけが現実で、あとはすべて存在しないものなのだ。


あたし自身も。


今日もあたしは家族の会話をぼんやりと聞いていた。


聞いていたというよりも、耳に入ってきていた。


という方が正しいかもしれない。


桜ちゃんは拙いながらも沢山おしゃべりができるようになっていて、しきりに「わんわん、わんわん」と、繰り返しているのが聞こえてくる。


犬が出ている番組でも見ているのかもしれない。
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