彼に殺されたあたしの体
☆☆☆

犬というのは人間よりも野性的だ。


それゆえ、人間が気づかないものにも気が付くことがあるようだった。


一家に飼われることになった犬は《マロン》と名付けられていた。


名前だけではオスかメスかわからない。


だけどとにかくマロンは元気な子犬だった。


家中を走り回り、キャンキャンとよく鳴いた。


あまりに騒々しいので、普段穏やかな旦那さんが怒鳴っていたくらいだ。


マロンが来てから桜ちゃんも元気いっぱいにはしゃぐようになっていた。


姉妹のいない桜ちゃんにとって、子犬のマロンはいい遊び相手のようだった。


こちらは少しはしゃぎ過ぎても、怒られるようなことはないようだった。


あたしは両親からの愛情を目一杯浴びて育っている桜ちゃんに、自分の幼いころを重ねる時があった。


あたしも一人っ子で遊び相手がいなかったから、初めて飼った金魚相手に色々と話しかけていた。
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