彼に殺されたあたしの体
あたしは崩れながら軽くなって行く土の重さを感じていた。


虫たちが危険を察知し、逃げていく。


「おい、掘っても掘ってもなにもないぞ」


「そうなの? なら、やっぱり何もないのかしら」


「わからない」


旦那さんが一旦手を止めている間、マロンが鳴き始めた。


それはまるで早く掘れと催促しているようにも感じられる。


そしてまた、穴が深くなって行く。


あたしに届くまで、もう、少し……。
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