彼に殺されたあたしの体
時間が経つにつれて痛みは消えて行ったけれど、それでもあたしの意識はしっかりしていた。


意識があるままにあたしは自分の心臓が止まるのを感じていた。


トクントクンと定期的に動いていた筋肉は徐々に力を失い、最後にドクンッと大きく跳ねて、そして停止した。


でも、あたしはまだ生きていた。


あたしの体は死んでしまっても、あたしの意識はまだここに存在していた。


だからあたしは、雨の中で「チッ」と小さく舌打ちする彼を見る事ができたんだ。


あぁ。


あたし、今迷惑をかけているんだ。


そうわかると、なんだか少しだけ胸が痛んだ。


胸の機能はとっくに停止しているけれど、意識があれば感情もそれに伴って動くものらしい。
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