彼に殺されたあたしの体
ナイフの切っ先は車の振動に合わせてあたしの心臓をグリグリとひっかきまわしているらしく、体内から筋肉が裂けるブチンッブチンッという音が聞こえてきた。


ひどく耳障りな音だ。


耳障りでもあたしはもう自分の両手で両耳をふさぐことはできなかった。


ただただ、その音を我慢するだけだった。


しばらく車が揺れていたかと思うと、それはゆっくりと停車していった。


先生の目的地に到着したようだ。


エンジン音が切れる音がした後、バタンッと運転席のドアが閉められる音がする。


先生の足音が微かに聞こえて来て、あたしが乗っているトランクのドアがあけられた。


カーペットに包まれているあたしの頬に冷たい外気が流れ込んできて、先生の家にいたときよりも気温が下がった事がわかった。


先生はカーペットの中からあたしの体を担ぎあげた。
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