彼に殺されたあたしの体
あたしは土の中で何時間にも渡って楽しかった日々を思い出していた。


そうしている間は不安や恐怖を感じることもなく、とても平和に過ごせていた。


けれど、ふと我に返れば目の前には土がある。


状況はなにひとつ変化していない。


ジットリと湿った土は更に重みを増していて、あたしの体と土の間に微かなスペースもなくなっていた。


粘土状になった土は鼻の穴を完全にふさいでいる。


もし生きたまま身動きを取れなくされ、埋められていたら?


そう考えると身の毛がよだつ思いだった。


土の中でジッと自分の命が尽きるのを待つ。


それは一体どんな気分なのだろうか。


幸いにもあたしは心停止してから埋められたため、呼吸困難といった恐怖は味合わなくてすんだわけだ。
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