神風の如く
現代でも友達がいなかったわけではなかったが、華蓮に近寄ってくるほとんどが家柄目当て
それが自分でよく分かっていたから、他人とは深く関わらないようにしてきたのだ
その点、お梅は華蓮がどこから来た、とかどうして壬生浪士組で男として過ごしているのか、とか深く尋ねる前に華蓮に気軽に接してくれた
華蓮にとってはそれだけで信用に足る人物となったのである
「華蓮ちゃん、近々壬生浪士組が大きな仕事をするかもしれへんよ
うち、芹沢はんから聞いたんよ」
大きな仕事────文久三年八月
恐らくあれに違いないだろう
「そうなんですか…………
悪いことにならないといいですね」
ただ、これから起こる事件は、壬生浪士組にとって大きな糧となる
避けては通れない道だろう
「大きな仕事だと華蓮ちゃんも行くことになるんやろ?」
「たぶん……そうなると思います」
華蓮が答えるとお梅は華蓮の両手を握った
「絶対、帰ってきてな?
うちは待ってることしかできへんから…」
お梅は華蓮に訴えかけた
「ありがとうございます、お梅さん
必ず、無事に帰りますよ」
お梅に心配をかけないように、ニッコリと笑う
「一仕事終わったら、一緒に町に出掛けたいんやけど………」
お梅は安心したのか、急にそんなことを言い出した
「いいんですか?私も行きたいです」
「ほんま!?なら楽しみにしてんね!!」
お梅はパッと笑顔になると、ほな、と言って前川邸に向かって行った