神風の如く





「とりあえず、今の状況はそんなところだ
各自、いつでも出動できるように待機していてくれ!!」




近藤の声が大広間に響く





今、京の町には反幕府派である長州藩が潜み、天皇や久家を取り込もうとしている





そうして政治を思うままにしようとする動きが気にくわない薩摩藩と、幕府を守るためにいる会津藩が手を組み長州を京から追い出そうとする





これが八月十八日の政変───だ





いわゆるクーデター





会津藩に力になることを願い出ている壬生浪士組もこれに参加することになったのだ





初の大仕事にみんな張り切っていた












「蓮、出動の日、お前は待機していろ…………って言っても来るんだろ?」





部屋に戻り、土方に問われた





「はい、もちろんです」





キッパリと答えると、だと思った、と土方が呟いた





「止めはしないが………
危険な任務になる、覚悟はしておけよ


お前がどうこうだけじゃなく、仲間が傷つくかもしれないってこともな」





「…………はい」





確かに、出動ということは、戦うということ───誰かが斬り、誰かが斬られる、ということだ




嫌なことが頭をよぎり、思わずギュッと目を瞑る




「そんなに心配しなくても俺たちはそんなやわじゃねぇ
一人守るモンが増えたんだ
簡単には死なねぇよ」




驚いて顔を上げると土方は笑っていた




「土方さん……私もみなさんを死なせないように頑張ります」




こんなにも心の温かい場所を失くせるわけがない
 



「あぁ、とにかく今日は寝ろ」




「……はい、おやすみなさい」





華蓮はみんなでまた屯所で笑いあえることを祈りながら目をつぶった







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