神風の如く
未来を変えれば、華蓮は元の世界には存在しなかったことになり、帰ることができない
──私はそれを気にしていたんだ……
「ふっ…………」
どうしてか、鼻で笑ってしまった
結局、華蓮自身も自分を守っていただけなのだ
そんなことに今更気づき、呆れる
未来を変えてはいけない、とさも正しいかのような理由をつけて
「お梅さん、私、最低ですよ……」
その声はとても消え入るようで、風のなびく音にすぐにかき消されてしまった
華蓮の部屋の隣でその声をすくい取った者がただ一人
沖田は華蓮に気づかれないように、そっとその場を後にした
文久三年九月十八日
壬生浪士組筆頭局長芹沢鴨は暗殺によって死去
享年三十六
壬生浪士組に秋と共に冷たい風が吹き始めたころの出来事
そして、壬生浪士組はこれを機に名を新撰組と改める
真っ直ぐ生きる男たちは、歴史とは違い、一人重たい荷物を抱え、時代の渦に巻き込まれるのであった