神風の如く
──ヒュゥッ
寒い─────
華蓮はいつもの縁側に座っていた
季節は秋
庭にある木が紅葉してきたのを眺めながら時々吹く冷たい風に体を震わせている
華蓮は芹沢暗殺の一件以来、一週間仕事をしていない
いや、するな、と言われたのだ
華蓮自身も何がしたいのか分からず、ずっとぼーっとしていることが多い
そんな、魂が抜けたような華蓮に土方をはじめとした幹部たちはどう接したらいいものかと迷っていた
新撰組と名を改めたことで、局長の近藤はもちろん、副長である土方も仕事が増え
そして、同じく副長であった山南は総長という役職についていた
「蓮さん」
肩に掛けられた羽織りからわかる匂いと優しい声から誰だかすぐにわかる
「沖田さん………」
沖田は華蓮の隣に腰を下ろした
「こんなところにいては、風邪を引いてしまいますよ」
「大丈夫ですよ、沖田さんこそ……」
沖田は自分が来ていた羽織りを華蓮に掛けていた
それに気づき、華蓮は返そうとする
「僕は平気です
毎日鍛えていますからね」
沖田は笑って、華蓮にもう一度羽織りを着せた
小さな庭とその上に広がる空を見つめる二人
沖田はどうにか華蓮を元気づけようとしていたが、言葉が何も出てこなかった
しかし、その静寂を断ち切ったのは意外にも華蓮だった
「ねぇ、沖田さん……」
「何ですか……?」
沖田は驚いたが、それを悟られないように優しく返す
「私は、何のためにここにいるんでしょうね………」
その姿は今まで見た、どんな姿よりも頼りなく、小さく見えた
「何言ってるんですか………」
華蓮らしくもない、と隣を見れば当の本人はぼーっと空を見上げている
「すみません、何でもないです……
本当、何言ってるんでしょうね」
視線に気づいたのか、華蓮は沖田の方を見て微笑んだ
──────………
しかしそれは、とても儚く、消えてしまいそうで……
沖田はなんだかわからない胸騒ぎを感じていた