神風の如く
「っはぁ………はぁ……」
だいぶ遠くまで来てしまった
この時代に来て、約半年ほど
度重なる巡察などによって、京の町の地図は頭に入っていた
だからここがどこなのかはわかっている
今はまだ、帰りたくない
これは華蓮の正直な気持ちだった
わからなくなるのだ、あそこに、新撰組にいると
自分が成すべきことと、自分が生きてきた平和な時代でのことが己の中で葛藤する
しかし、今日中には帰らないといけない
土方や山南が定めたという局中法度には脱走すれば切腹、というものがある
華蓮もそれを忘れたわけではなかった
ふと、下を向くと自分が下げている刀が目に入る
──私は、これで全く知らない人を斬って、守りたいものを守れなかった
「………っ…………うっ……」
──お梅さん、芹沢さん、きっと私を恨んでますよね…………
華蓮はすっかりオレンジ色に染まった空を見上げていた
そろそろ帰らないと、と思い来た道を戻ろうとした
「おい、おまん」
知らない人が呼んでいる
華蓮はそっと逃げようとした
「ちょっと待ってくれんか
話があるぜよ!!」
そう言って手を引かれた
「なっ…………」
思わず、後ろを振り返る
「そんなに怖い顔せんでも、何もしないぜよ
ただ、おまん……新撰組のモンかと思うがや
どっかで見たことあるぜよ」
──まずい…
華蓮は後ずさりをした
──だけど、この話し方………?
「わしは、坂本龍馬じゃき」
さっ、坂本龍馬!?
知らないハズがない、坂本龍馬なしでは倒幕など成せないのだから………
「その顔はわしを知っとるんか
少し話をするだけじゃき、ついて来るぜよ」
そして半ば強引に坂本は華蓮を連れて行った