神風の如く
「あの、それだけなら帰りたいんですけど」
こんな状況でこんな発言をできる女なんてそうそういないのだろう
中岡は華蓮を凝視していた
「まあまあ、そう怒ってくれるな
ところで……おまんは何者じゃ!?」
坂本の目つきが変わる
「………っ」
260年続いた幕府を崩す人だ、さすがに鋭い目をしている
「ただの女子が新撰組に入れるとは思えんに」
「………新撰組に手を出さないで下さい
私も坂本さんとまだ、敵対したくはありません」
まだ─────
そう、いずれは敵対してしまうだろう
華蓮が新撰組にいるかぎり
「まだ、か……
おまんはこのままじゃと、わしらと敵対すると思ってるんか?」
「そうなると思いますよ
ただ、私は嫌いじゃないです
坂本龍馬……日本を変える人……」
彼がいなければ平和な日本は来ないのだ
「なんか、おまんは本当に不思議じゃ
なんでもかんでも見通しているように見える」
見通している、というか知っている、が正しいのだが………
「よし、わしはおまんを気に入ったぜよ!!
二、三日捕まっててくれ」
──は!?
「りょ、龍馬!!!
何言ってるんだお前は!!」
「どうせおまんは今、帰りたくないんじゃろ?」
本当に、どこまで見抜かれているのか……
華蓮は少し迷って、首を縦に振った
「交渉成立じゃき!!」
坂本はまた陽気に笑った
本当ならば、ここにいてはいけないのだろう
坂本龍馬は恐らく新撰組の敵だ
しかし、華蓮にはそうは思えなかった
そしてこの出逢いが、華蓮を新撰組を、日本を大きく変えることとなる───