神風の如く
六
初めての潜入捜査
文久三年十二月
京の町もすっかり冷えて本格的な冬がやってきていた
──寒い
当たり前だが、暖房もストーブもないこの時代
夏も体に堪えたが、冬も華蓮にとってはなかなか厳しいものだった
「れーんさんっ!」
暇を持て余していると沖田は必ずやってくるようになった
それは坂本と繋がりがありそうな華蓮を監視するためか否か…………
相変わらず真意はわからない
「おはようございます、沖田さん
あの、お願いがあるんですけど」
今日、華蓮や沖田が所属する一番隊は巡察も仕事もない
「なんですか?」
「芹沢さんとお梅さんのお墓に連れて行って下さい」
何を言い出すかと思えばそんなこと、沖田はふっと笑みを零す
「やっと言い出しましたね
あれだけ泣き喚いておいて、お墓参りも行かないなんて薄情だと思っていたんですよ」
──本当にハッキリ言うなぁ…
「これでも受け入れるのに時間がかかってたんですっ
私、まだまだそんなできた人間じゃありませんから」
あの一件以来、沖田はさらに意地悪くなったように感じていた
しかし、華蓮は一番隊の隊士で沖田はその組長だ
逆らうことなどできない
「ふふっ、すみません
少しからかいすぎてしまいました
朝餉を食べたら行きましょうか
きっとお二人とも喜びますよ」
華蓮は沖田と共に広間に向かった
「それでは、行ってきますね」
華蓮は土方の許可をもらい墓参りに行こうとしていた
「もう、大丈夫なのか?」
3ヶ月前、あれほど我を失ったようになっていた華蓮だ
土方が心配するのも当然で……
「はい、ちゃんとお話してきます」
華蓮を見送り土方は筆をとる
──ようやく、墓参りか
3ヶ月………かなり時間がかかったように思う
坂本と話して、一度はけりを付けたよみたいだったが、失った悲しみはなかなか癒えていないようだった
──苦しむのはいつもお前ばかりだな
土方はまた一つため息をついた