神風の如く




「はぁっ………」



着物で走るのはかなり一苦労



山崎はここまで来れば、あとは突き当たりを左に曲がるだけだと言い、どこかへ行ってしまった



その突き当たりが目に入る



そこを曲がると、初めにくぐった門があり、華蓮外へ出た




──ここからどうしよう…




その時────




「蓮か!?」



土方の声がした



「えっ、土方さん!?
どうしてここに………?」



何故だかわからないが、土方はとても険しい顔をしていた



「後回しだ、とにかく帰るぞ」



そして土方は華蓮を横抱きにして抱えると走り出した



「待って下さい!!
沖田さんたちが、まだっ……」



「あいつらなら問題ない
必ず帰ってくる

だから大人しくしっかり捕まっとけ」



腕の中にいる華蓮を見つめながら優しく笑う土方に華蓮も頷くことしかできなかった



そして、裏道をさっそうと駆け抜け、着物姿の華蓮を誰にも見られることなく屯所の土方の部屋に着いた








「お前はすぐにそれを脱いで着替えろ
俺は近藤さんの所に行ってくる」



「わかりました」



土方は華蓮を抱えて全力疾走したはずなのにほとんど息を乱していなかった



今は部屋で仕事をしていることの方が多いのに、今までどれだけ鍛えたのだろうか




華蓮は姿勢を正して着替えようと着物に手をかけた







………………ん?



「あ、れ………?」



着物なら着たことがあるので、簡単に脱げると思ったが、やり方が違うようでうまくいかない



華蓮は困惑した



──早くしないと、土方さんが戻ってきちゃう…






「蓮、終わったか?」



少しして土方が戻って来たが、華蓮の着替えは一向に進んでいなかった



「あの、土方さん、助けて下さい」



華蓮は仕方なく、土方を呼ぶ



「ん?
なんだ?、入るぞ………っておい!!」



土方が赤面するのも無理はない




華蓮は帯の周辺が取れないから、と無理やり脱ごうとしていたのだ



つまり、着物の前が大きくはだけていた







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