神風の如く
──めったに動揺とかしたりしないのに…
「ふっ……ははっ」
──えっ!?
驚いたことに、沖田はいつもの黒い笑みではなく、素に近い表情で笑っていた
さらに、お腹を抱えている
「あの、何か面白いこと言いました?」
「クククッ………違いますよ
この沖田総司に向かって、守れてよかった、なんて言う人が現れると思わなかったんですよ」
確かに沖田は強い
だが、それでも同じ人間だってことを忘れてもらっては困る
「何言ってるんですか!
沖田さんは、近藤さんに土方さんに……他にもいろんな人に守られてますよ!!
私なんて本当に微力なんですから」
沖田は身長が高い
一番は原田なのだが、恐らく土方よりも沖田の方が長身だ
だから華蓮を見下ろす沖田に背伸びをして負けないように主張した
「………そうですねぇ
わかりました、というわけでちょっと来て下さい」
「へっ!?って何ですか!?」
沖田は華蓮の手を引き、歩き出す
「ねぇ、蓮さん、土方さんの句の中で恋の句があるの知ってますか?」
「………あ、はい
えーっと、知れば迷い知らねば迷わぬ恋の道、でしたっけ!?」
豊玉発句集の全てを覚えているわけではないが、印象的だったので頭に入っていた
「そうそう、それです
よく考えて見れば、土方さんは知っちゃったんですねぇ、恋の道」
急に沖田が止まり、黒い笑いを見せたとき
──スパンッ
「総司ぃぃいいいい、蓮、お前もだっ!
俺の句を歩きながら話すんじゃねぇぇえ!」
「えっ、ひ、土方さん!!」
そう、沖田はわざと土方の部屋を通るようにして歩いていたのだ
「土方さんは迷ってますか?」
ふむふむ、とポーカーフェイスを崩さない沖田
「総司、てんめぇ!!」
「さ、蓮さん、逃げますよっ!!」
それを合図にまた華蓮は連れて行かれる
「ちょっと、待ってくださぁぁぁい」
──なんで私までっ
「知れば迷い~知らねば迷わぬ恋の道~」
「総司ぃぃいいいい!!!」
今日も元気な新撰組であった