神風の如く




しばらく言葉を待つもののなかなか話してくれないので、催促してしまう



「あの、なんですか?」



「た、たまには昨日のように甘えてみるのもいいのでは、ないか……?」



「えっ?」



そんな言葉、一番似合わなそうな人に言われるとは思わず、華蓮は驚いた



「その…だな、副長だけではなく、みなお前のことを大切に想っているはずだ

俺も…普段厳しく指導しているから、お前が努力していることくらい知っている

だから遠慮などするな」



はじめは照れくさそうに言っていたものの、言い出せばハッキリと最後まで言う斎藤


そしてそんな斎藤に褒められることなどめったにない華蓮は喜んだ



「いきなりどうしたんですか、斎藤さん!
嬉しすぎるじゃないですか~

師匠に褒められるなんて……」



華蓮にとって、斎藤は師匠だ



同じ左利きにも関わらず、右でもほとんどのことをやってのける斎藤を華蓮は心から尊敬している



「お、俺は師匠なのか?」



あまり人に懐かれない斎藤は少し戸惑いながら尋ねる



「はいっ、もちろんです
斎藤さんは私の尊敬する師匠です!」



「そうか」



斎藤はいつも見せないような笑顔で、華蓮の頭を撫でた



「ふふ、でもどうして急にそんなこと言って下さったんですか?」



「副長も総司も甘やかしていたし、俺もそうすべきかと思っただけだ

それに……昨日のお前を見て、甘えたいのかと………」



──うっ、やっぱり…………



華蓮の予想は的中していた



「き、昨日のことは忘れて下さい!
別に甘えん坊なんかじゃありませんし、あれはお酒のせいなんですっ
失礼します!!」



そうやってみんなして甘やかされるとどんどんそれが当たり前になってしまう



それはいけないこと



だって、失ったときに辛くなってしまうから



できるだけ、心配かけないように、甘えすぎないように………



これは華蓮なりに考えたことなのだ












「珍しく素直ではないな」



斎藤は走って行った華蓮を想い、薄く笑った




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