神風の如く
その時、華蓮は土方の手にある異変に気づいた
「土方さん!」
おもむろにその手を取る
土方の右手の甲から血が出ていた
「これ、さっきですか?」
土方は華蓮と柱の間に自分を入れるようにして庇っていた
そしてその柱の木目から棘のようなものが出ている
それに当たったのかもしれない
「このくらい、なんでもねぇよ」
「なんでもなくなんかありませんっ!
傷口に菌が入れば死にますよ!」
手当しますから、と無理やり土方を屯所へと連れ帰った
「な~んかさぁ、すっかり女房って感じだよね」
二人の後ろ姿にニヤニヤする藤堂
「だよなあ、羨ましいぜ」
「おいおい、そんなこと言っていいのかよ佐之
お前にだっているだろうに」
「んなっ、なんでお前が知ってんだよ!」
そんな原田と永倉の会話の内容を知るのはもう少し先の話
「ん?……総司、どうかしたか?」
藤堂は様子のおかしい沖田が目に付いた
「ふふ、なんでもないですよ」
沖田は笑顔で答える
「はは、やっぱり僕は変わったなぁ…」
そんな誰にも聞こえない小さな独り言は冬の空にかき消されていった