神風の如く
土方の手の切り傷は深くはないが、横に3㎝ほど切れていた
綺麗な水で濯ぎ、血止めを施して、真っ白な布で傷口を巻いていく
「すみません、私のせいで」
平気そうな顔をしていても、怪我をした以上全く痛くないわけではないはずだ
「いいって言ってるだろ……
お前、なんか変わったな」
「えっ?」
土方の思いがけない一言に少し動揺する
「はじめのころはただ、この場所に慣れようとただがむしゃらに見えた
だがな」
二人は手を握ったまま離さない
「最近は言葉も堅苦しくなくなったし、お前は自然体でいるように思う」
言われて、初めて気づく
考えてみれば、ここに来たばかりのころは必死にこの時代の人になろうとしていた
認められたくて、ここにいる理由が欲しくて
でも今は違う
自分で考えて、言いたいことはハッキリと言える
そんなふうに変わっていた
「なあ、華蓮」
──ドクン
自分が願ったことというのに、全く慣れない
「は、はい……?」
「後悔、してないか?」
未来から来た少女が、この時代の人間である土方と惹かれ合い今に至ること
恐らく時代に抗うであろう新撰組に身を置くこと
それら全てを意味していた
「ふふ……」
華蓮は微笑む
まるで、全てを包み込むかのように
「前にも言ったじゃないですか
後悔はしません、何があっても」
そう、初めて人を斬ったあの日、土方に向けて放った言葉