神風の如く

本音と事実





元治元年4月



華蓮が幕末に来て、ようやく一年が経とうとしていた



幕末に来たのは五月中旬頃



よって、華蓮はこの時代で初めての春を迎えていた







「土方さんよぉ」



朝餉の時間に弱々しい声を出したのは永倉



最近はずっと、頼むよぉ、とか許してくれよぉ、と土方の周りをウロウロしている



内容はサッパリだが、華蓮は永倉を不憫に思っていた



そして、ついにその永倉も最終手段に出たのである




「せっかく桜が綺麗に咲いてんのになんで花見しねぇんだよ」



そう、永倉は花見、と題して宴会を開きたかったのだ



「おまっ、ここで、その話っ」



土方が焦るのにも理由がある







「なんだ、永倉君
俺はそんな話一度も聞いていないが、いいじゃないか
明日は花見にしよう!」



そんなお願いに甘い近藤もいたからだ



「はぁ……近藤さん」



最近では京の町に長州の藩士が潜伏していると耳にするので新撰組も忙しくしている



そんな中で呑気にお花見、なんて言っている場合ではなかった



「まあまあ、たまにはいいじゃありませんか
みんな毎日しっかり働いてくれているわけですし」



「山南さんっ、恩にきるぜ……
というわけで、いいだろ?」



よっぽど酒好きなのか、口に出した永倉だけではなく、原田と藤堂も目をキラキラさせて土方の反応を見ていた



それでも渋っている土方にトドメが刺された





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