神風の如く




夕餉も食べ終わり、華蓮は一人でお弁当の支度を始めた



この時代には弁当箱というものがないので、綺麗な桶や大きな木箱を代用することにした



主に支度をするのは明日で今日は下準備



新鮮なうちに魚を焼き、骨を取り除いて身をほぐす



勝ってきた野菜は味噌とあえて、小さめに刻んで一日置く



そして、漬けてあった漬け物を取り出して、同じように小さめに切った



「よし、後は明日だ」



量から考えて、お米は三回程度炊かないと間に合わない



華蓮は翌日、いつもより一時間ほど早起きをした



昼前には屯所を出発すると聞いていたからそれまでに間に合うように




みんな、喜んでくれるだろうか



華蓮は喜ぶ顔を想像しながら手際よく作業していった












「いやあ、今日は実に花見日和だ!」



「そうですね、桜が青い空を背景によく映えます」



近藤と山南は満足そうに下から桜を眺めている



その傍らには土方もいるが、華蓮の心配したとおり、難しい顔をしていた



新撰組一行は都合のついた者のみ、桜並木にきている



とは言っても、それがかなりの人数のため、なにか起こりはしないかと考え込んでいるようだった




「歳、そんなに考え込んでないで楽しめ!」



近藤に酒を渡されていたが、それも口にしてはいなかった



「あの、土方さん……
これ食べてください」



華蓮が土方に差し出したのは葉につつまれた握り飯



土方はそれを受け取ると一口かじり



「こ、これ沢庵か?」



と嬉しそうに言葉を発した




「はい、土方さんがお好きかなと思って」



土方の好物は沢庵だ



それを握り飯の中にいれる具に使った



他にも、魚の身をほぐしたものや、昨日細かく刻んだ味噌味の野菜などネタは様々



この沢庵の握り飯だけは土方のためにとっておいたのだ




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