神風の如く
熱中症だとしても、倒れるということはそうとう重体のはず
華蓮は必死に祈った
「蓮さん……」
華蓮の腕の中にいた沖田は意識がハッキリとし、目を開けていた
「沖田さん、よかった!!
さあ、下も静かになってきましたし、土方さんたちも着いたと思います
行きましょう」
華蓮が沖田の右肩を、藤堂が沖田の左肩を支える
「蓮っ!!」
階段まで来ると下に土方が見えた
近藤も永倉も無事なようだ
華蓮と藤堂は沖田を支えながらゆっくりと階段を降りた
「総司はどうした……!?
って、お前その姿は……?」
「沖田さんはもう大丈夫です
私のことはとりあえず後回しにして下さい
それより……近藤さんっ、みなさん」
まだやらなくてはならないことがある
「まだ息のある人を助けます
ただし、それは敵味方関係ありません
すぐには動けないと思うので長州藩士は縛って捕縛して下さい」
「た、助けるって……どうやって…」
周りの幹部たちは戸惑い気味だが、ただ一人、先ほど華蓮を見ていた藤堂が口に人差し指を当ててみんなを黙らせた
華蓮が目を瞑った瞬間優しい風が池田屋を吹き抜ける
「風よ、息のあるものが生きる手助けを」
誰もが華蓮の姿に驚いた
凛々しく、美しく、優しい
まさに神や仏というような────
「さぁ、ぼーっとしてないで早く手当てをして下さい!
怪我人を優先的に屯所に運んで!!」
風が止んだと思えば、華蓮はいつも通りの姿へと変わり、隊士たちに指示を出していた
朝日が昇り、長かった夜が明ける
この事件は後に池田屋事件と呼ばれるが、華蓮が知っていた歴史とは大きくことなる結果となる
新撰組は即死した一名のみが犠牲となり、大怪我をした二人は華蓮によって救われた
もう、引き返すことはできない
新しい未来の幕開けだったのである