神風の如く
「そして、長州は武力行使で幕府軍を打ちのめすんです
それも、幕府はとっくに白旗を揚げているにも関わらず……」
「なら、幕府は真っ先に尻尾を巻いて逃げ出すと?」
「その通りです、山南さん」
──さすが、飲み込みが速い
「そして、新撰組はそんな戦いに巻き込まれた高い志を持つ若い男たちの集団だと、私たちには伝えられています」
褒めたくて言ったわけではないが、明らかにみんな嬉しそうな顔をする
「話は最後まで聞いて下さい
新撰組はその戦いでなくなるんです
幕府にいいように使われて、見捨てられた会津藩と一緒に」
言い方は悪い気もするが、これが真実だ
結局徳川慶喜は逃げ出す
戦う覚悟なんかない
「付け足すと、近いうちに京の町も火の海になってしまいます」
禁門の変でも、鳥羽伏見の戦いでも、町が犠牲になる
「幕府はどの道滅びてしまう運命なんです
外国よりも発展が遅れている日本は開国せざるを得ません
ただ、私はその犠牲を敵味方関わらず、少しでも少なくしたい
日本人同士での争いなんておかしいんです
確かに尊皇はいいことです、しかし、攘夷はいりません
日本文化のよいところは残し、不便なところは改善していくべきです
でないと、日本は外国に乗っ取られてしまうでしょう
新しい政府には薩摩や長州の人間だけでなく、違う視点から意見を出す人が必要だと思います
長州や薩摩の人たちの政治はやがて世界との戦争を招いてしまうんです
そして、その力は新撰組や会津藩にある
私はそう考えています
民のことを大事に思っているから…
だから、私はその意見を通すために力を欲しました
国内で争って、大事な人材を失ってはなんの意味もない
幕府にも長州にもいいところはあるんです」
伝わるだろうか
華蓮の想いが、覚悟が