神風の如く




もちろんこれらのほとんどが華蓮の指示だ



非番の時に愛想良くと言ったのは山南だったのだが、成り行きで土方が隊士たちに説明したため、鬼の副長はどこへ行ったのかと噂が流れたほど



──実は鬼じゃないんだけどな



土方が新撰組を守るために鬼になっていることに気づいて欲しい



まあ、それが知れたら知れたで本人は確実に居心地悪くなるだろうが……



そんなことを考えながら、前川邸に足を踏み入れる



ここは新撰組が池田屋で捕らえた長州藩士がいる場所だ



華蓮だけでは心配だと、土方と沖田も一緒




──バンッ



縄で縛ってはいるが、十分な食事を与えているため、無事に生きている



蔵の扉を開けると、藩士たちが怯えた表情でこちらを見ていた



それもそのはず、正直、今ここで生きている方が不思議なのだから





──藩士のみなさんには悪いけど、こうするのが一番だから



「あの、今から男っぽく喋りますけど動揺せずにキリッとしてて下さいね
頼みますよ!」


後ろにいる土方と沖田にコソッと耳打ちすると二人とも首を縦に振った



それを確認し、華蓮は再び藩士の方へ向き直る











「さて、どうしようか……
……まず、聞きたいことがある

お前ら長州が京の町を火の海にしようとしたってのは本当か?」



ハッキリ言うと今の華蓮は別人


目をつり上げ、口角を少し上げて、荒々しく喋る姿は土方にも引けを取らない


演技とはいえ、女の子とは思えなかった




「っ………そうだ」



しばらく誰も答えなかったが、華蓮の気迫に負けた一人が返事をした







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