神風の如く




華蓮の言葉で土方が筆の動きを止めたことに気づいた



「お前、行きたかったんじゃねぇのか?」



正直に言うとちょっと違う



お祭りなんて、もしかするとどうでもいいのかもしれない



「土方さんが一緒なら、なんでも」



──あなたが隣にいてくれるから意味がある



「っ、ちょっと土方さん!!
着ている途中なんですけど……」



土方は華蓮を後ろから抱きしめていた



「……俺が着せてやる」



この声のトーン、意地悪く言っているのがすぐにわかった



「いいです、自分でできますよっ!!」



あっち向いてて下さいと土方を追いやった







水色の綺麗の着物に桃色の帯



そして帯の色とお揃いの花がついている簪を土方がくれたので、それを結い上げた髪につける



鏡を見て、いつもの自分ではないことに驚いた



「やっぱり、よく似合う」



土方は自然な笑みを作って華蓮を見つめていた



「……そうですか?
本当にありがとうございます」












その後、土方が耳元で



「脱がすのは俺だからな……」



と勝ち誇ったように囁いたのは二人だけの秘密






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