神風の如く
──あれ、この道…………?
土方に引っ張られてついて行っているだけだし、夜で道は真っ暗だが、見覚えがあった
──もしかして
「ここだ」
一年前くらいに夕日に照らされた京の町を見下ろした場所
「……今日は祇園祭の灯りがよく見えますね」
これはこれで絶景だった
何も話さずにただ、景色を眺める
二人の間に会話がないことは珍しくない
最近ではそれがどこか心地よくさえなっていた
「……華蓮、もう未来には戻れないって本当なのか」
土方は唐突に聞く
「はい、私は歴史で死ぬはずの人を救いましたから………」
それが例え、新撰組の未来を変えることのない出来事だとしても、だ
人の一生を変えてしまったことに変わりはない
「寂しくないのか」
その声は優しく、慰めてくれるようで
「寂しくないと言えば嘘になります
家族は私にとって大切な存在です
ですが、それよりも土方さんや新撰組のみなさん、そしてこの時代の人々の方が大切だと思ってしまったから………
私は目を背けたくないと思ったんです」
自分にどうにかできるかもしれない力がある
そうわかっていて、踏み出せる人間は果たして何人くらいだろうか
そんなに多くないだろう
だが、華蓮は敢えてこの道を行く
自分の心に従うと決めたから