神風の如く
「ごきげんよう、華蓮さん」
「華蓮さん、今日は私の家にいらっしゃらないかしら?」
「今週の日曜日にパーティーがありますの
是非来てくださいね」
学校に行けば、あまり知らない人からも声をかけられる始末
もちろん、全て丁重にお断りする
華蓮にはやるなければいけないことがあるからだ
学校──当たり前だが、所謂お嬢様学校で勉学に励み
放課後は主に空手、それから今は英会話、茶道や華道を含めたマナー講座に忙しい
どうしてそこまでするのか、とよく聞かれる
初めて聞かれた時、その質問には答えられなかった
──将来、財閥を継ぐお兄様を支えるために?
──いずれ、社会に出る自分自身のために?
どちらも違う気がした
兄は華蓮の力を借りなくても恐らく自分でできるような人
そして自分自身のためであれば、もう少し心から楽しむことができるはずだ
幼いころから、湊財閥の令嬢として両親に完璧を求められてきた
華蓮がやること全てに両親が関わっていた
物心ついたころからそれは当たり前で、嫌だとかそういうことを思ったことはない
だからこそ、全てを完璧にこなすことが華蓮にとって当然になってしまっていた
物事に私情を挟まず、ただひたすら打ち込む華蓮が、使用人の間でロボットのようだと言われていたことは言うまでもない
つまり華蓮は、ただやらされて、ここまできてしまっていたのである