神風の如く
華蓮はお兄ちゃんっ子だった
幼いころから兄の背中を追いかけていたのだ
だから、剣道の経験も少しはある
それでも華蓮が空手を選んだのは両親から何かあったときに自分の身を守るため、と言われたからだった
そのときの拓哉の反発はそれまで見たことのないもので、拓哉は華蓮が本当は剣道をやりたがっていたことを見抜いていたのかもしれない
しかし、両親に抗議して勝てるはずもなく、拓哉はしょんぼりとしてしまっていた
「お兄様、いいのです
空手を習うことは、お父様とお母様、そしてお兄様にとってもよいことなのでしょう?
私もお兄様のように自分の身を守れるようになります
たとえ、剣道でなくても、それが私にとって一番いい方法のようですから」
そのとき、自分自身が悲しかったのかどうかなんて覚えていない
ただ、私のためを想って抗議してくれた兄を悲しませたくはなかった
「はは……華蓮は強いな─────」
ふにゃりと笑った拓哉の顔は今でも覚えている
これが中学二年生の時の話だから、かれこれ三年間ひたすら空手に打ち込んだ
そして、この前の関東大会で優勝し、6月末には全国大会を控えている
関東大会で優勝したときは、両親も拓哉もとても喜んでいた
華蓮は期待を裏切らなくてよかった、と安堵し、さらに強くなることを決意していた