神風の如く
「はああぁぁ!!」
「やあぁぁ!!」
威勢のいい声が聞こえるのは家の近くにある空手の道場
今日も学校での授業を終え、練習に来ていた
「華蓮、今日はいいと言っただろう」
頭を坊主のごとく丸め、優しく笑うのはここの師範である海谷先生
先日大会が終わったばかりであるため、彼は華蓮に休みを与えたはずだった
「大丈夫です
私はもっと強くならなければなりません
休んでいる暇はないんです」
みなが恐れる海谷先生も、この少女の健気な姿には心打たれたとか─────
やらされている、というには一生懸命すぎるが、それが華蓮のよいところでもあり、悪いところでもあった
「よし、今日はここまで!」
放課後になってから約三時間ほど練習に励んだ
日が沈んだと言えど、もう5月
滴る汗を香りのよいタオルで拭き、着替えを始めた
少し居残り練習をしたせいか、着替えが終わる頃には華蓮一人になっていた
荷物を持ち、入口に数段ある段差を降りる
不意に上を見上げると雲一つない夜空に、正真正銘まん丸の月が輝いていた