神風の如く
「蓮さん、そろそろ行きますよ?」
声をかけてきたのは沖田
そして今日は華蓮がはじめて巡察に同行する日だった
まだ、剣術はできないため、刀は持たないが、華蓮は体術──空手だけでも十分戦力だった
「はい、すぐに行きます」
華蓮は最後の一枚を干して、桶を元あった場所に返し、部屋に戻った
「土方さん、蓮です、入りますね」
「あぁ」
ここは一応華蓮の部屋でもあるのだが、もともとは土方の部屋だ
入るときに、一言いうことは欠かさない
部屋に置いてあった自分の羽織りを着た
浅葱色の─────ダンダラ模様が入った羽織
まさか自分も着ることになるとは思わなかったが、もらえたときはすごく嬉しかった
「巡察か?」
土方が筆を置き、華蓮に目を向けた
「はい」
「まあ、総司が一緒だから大丈夫だとは思うが、気をつけろよ」
土方はそういい、懐から刀を差し出した
それはいつも腰に下げているような長いものではなく、かなり短い小刀だった
「護身用だ、一応持って行け」
万が一のときはこれで身を守れということだろう
もっとも、華蓮が人に刀を向けられるかどうかはわからないが
「もし、やられそうになったら迷わず抜け
そうでないと、お前がやられる
今はそういう時代だ」
土方の言うとおりだ
「……はい、行ってきます」
華蓮は小刀を懐にしまい、部屋を出た