神風の如く
壬生浪士組のある一日③
文久三年六月
新撰組もう一人の局長、芹沢鴨を中心として、近藤、山南、沖田、斎藤、永倉、山崎が大阪に行った
最近は壬生浪士組の名を語って平気で人を斬り殺す集団がいるという噂が流れていた
もともと、壬生浪士組は京の人々によく思われていない
巡察に出れば、浅葱色の羽織を見て、あからさまに避けたり、悪い噂を言う人もちらほら
華蓮も何回かの巡察で、そんな状況を理解していた
この度の大阪への出張は、資金集めと壬生浪士組の名を売るため
しかし、未来から来た華蓮はこの大阪出張がとんでもない事件になることを知っていた
ただ見送りをすることしかできない華蓮は、ひたすら芹沢鴨を止めて、と祈った
そして、屯所が少し静かになった、ある日のこと──────
「蓮!!、蓮はいるか!?」
これは土方の声だ
華蓮は床を掃除するために持っていた雑巾を一旦隅に置き、声の元へ急いだ
「はいっ、土方さん、どうかしましたか?」
土方も部屋から出て華蓮を探していたようで、ばったりと廊下で会う
「いや、墨と紙がなくなりそうだったから、頼もうかと思ったんだが………」
華蓮が外出するには、幹部の誰かと一緒でなくてはいけない
しかし、今はほとんどが大阪出張中
たしか今日は─────
「井上さんと平助くんが巡察、原田さんは稽古中なので、今すぐは難しいのですが………」
今はお昼過ぎだから、行けるとしても夕方ごろになってしまう
「…………じゃあ、俺が行く、付いて来い」
予想もしなかった土方の一言で、一緒にでかけることになったのである