偽フィアンセは次期社長!?
案の定ふっかふかのシートに身を沈め、ちらっと課長を盗み見る。


「用意しといて良かった……せめて、それ、使え」


……それ??


指差された後部座席には、大きな紙袋が2つ。



……て、て言うか……この紙袋って……。



まさか、と思いながら開けると、その中にはルブタンのパンプスと、どこのかは分からないけど明らかに高級なカシミアのストール。


色はどちらも、何とも言えない綺麗な赤。


深くて、温かくて、うっとりするような。



「……なんなんですか、これ」


「とりあえず、その2つで何とかなる……と思いたい。それ、やる」


「は?なに言ってるんですか?
さすがのあたしも知ってますよ、ルブタンの靴がどんなに高いか。
貰えるわけないじゃないですか!」


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