偽フィアンセは次期社長!?
仕事中だというのに、頭の中ではそんなことばかりをぐるぐる考えていて。


だから、全然気がつかなかった。


「………パイ、仁美先輩っっっ!」


月菜ちゃんに何回声を掛けられていたのか、耳に届いた時には必死にも聴こえる声で。

我に返ると、視界に飛び込んできたのは……


「松田課長……」


「糸島さん、ちょっと大丈夫ですか?あ、どうもありがとうね」


課長にお礼を言われ、月菜ちゃんのお尻に、確かにピョコピョコと揺れる尻尾が見えたような……。


いやいやいや、それどころじゃない。


一体何の御用でしょう。


「はい……」


カタン、と椅子を鳴らしてデスクから離れる。


……心の準備が出来てないんですけど……。


「ちょっとお願いしたい作業があって……糸島さん、お借りしますね、浜崎さん」


おうよ、とばかりに浜崎部長が手をあげる。
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