偽フィアンセは次期社長!?

……ちょっと、まずかったかな。


別に課長は軽い冗談で言っただけなんだろうに、あたしに過剰に反応されて。

いい迷惑だよね。


あたしだって、まさか課長が本気で付き合おうとか言っていない事くらい分かってる。


だけど、つい……

あたしの過去のトラウマをぶちまけて、八つ当たりをしてしまったというか……。


もしかしたら、これでよかったのかもしれない。


これ以上、課長に振り回されてフィアンセのふりをしたりしていたら、あたし……もっともっと苦しくなっていたと思う。


あたしは、穏やかに幸せに暮らしたい。



途中で寄ったトイレで呼吸を整える。


課長に呼び出された帰りに、泣き顔なんてことになったら、勤務中にも関わらず、きっと大騒ぎになってしまうから。(月菜ちゃんを中心に)


色気もそっけもない四角い鏡に映ったあたしは、薄暗いライトに照らされて、冴えない顔をしていた。
< 212 / 347 >

この作品をシェア

pagetop