偽フィアンセは次期社長!?
「そうですよねー、だって、本当のフィアンセがいるのに、まずいですよね……」


さらり、と言ってみてから、祈るように次の言葉を待つ。




『なんのことだ?』って言って。


『そんなわけないだろ』って笑って。


『逆に誰だ?それ』とかふざけて。


…………お願いします。



気が遠くなるくらい、沈黙が長く感じられて。


「……あー…………」


血の気がサァーッと引くのが分かった。


課長の、ばつの悪そうな顔が目に入ったから。


どうして、そんな顔をしているの?


どうし…「誰から聞いた?」


ぱちん、とあたしの電源が切れた音がした。


なんで、否定しないの……。
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