偽フィアンセは次期社長!?
「今日のマルシェはね、売るのだけが目的じゃないんだぁ」


寒さ対策に早速買ってきたホットレモネードをふぅふぅしながら、那由子がつぶやく。


「……へ?何するつもり……?」


同じくふぅふぅしながら聞くあたし。


「好きな作家さんの、ベビー服を買っちゃおうかなーなんて!」


「きゃー!豆なゆに!!」


那由子のお腹の子を″豆なゆこ″略して″豆なゆ″と呼び、すでに叔母さん気分のあたし。


ああ、しばらくぶり。


こんな幸せな気持ち。


会社でも、家でも、確かに波風は立っていなかったけど、かといって幸せだったか問われると疑問で。


目の前に山積みのやることを夢中でこなしてた、的な。


「え、ちょっと待って、俺には?」


ブースの中のセッティングを、那由子の指示通りにやっていた隼人君があたし達の手元に気づく。
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