空の恋。
めんつゆを入れて煮物は完成直前というところで、聞こえてきた泣き声。
あれが男泣きというものか分かる、というか男泣きの見本のような感じだ。
『…すごい泣いてるね』
「おじいちゃんの教え子だったんですって」
『……ふーん…』
こんな豪快に泣くなんて、きっとむさ苦しい男子なんだろう。そんなことを勝手に思いながら煮物の火を消した。
そのとき、私はどんな人かすごく気になって、どうしても見てみたくなった。
どうしてかは分からなかった。
『少しだけ…』
襖を少しだけ開けて、様子を伺う。
隙間から部屋を見て私は目を見開いた。
お父さんと同級生らしき人に慰められながら泣いていたのは、お葬式には合わない金髪のお兄さん。
でも、そんなことはどうでも良かった。
だって、お兄さんの泣いている横顔がすごく綺麗で、儚くて、今にも消えてしまいそうだったから。
あんなに綺麗に泣く男の人がいるなんて、初めて知った。
「…?娘さん?こんばんは」
男の人に見惚れていると、隣にいた同級生らしき人に声をかけられた。
突然でしどろもどろになっていると、泣いている方も私に気付いたのか、袖でごしごしと目を拭いた。
『あっ、待って。擦ったら腫れちゃう』
泣いた後に目を擦ると周りから見てもとても痛々しくなるのだ。
私はその人にそうなって欲しくなくてハンカチを渡し、目を冷やすための氷を取りに行く。
「…出来た娘さんですね」
「いやいや…ははっ」
「京夜、さっき言われたでしょ。目擦らないの」
「………ん…」
キッチンで袋に氷を詰めながらそんな会話が聞こえてくる。
話を聞いてるとまだ目を擦っているみたいだ。
料理の盛りつけをしているおばさん達の横で、急いで氷を詰めた。
「はい、氷」
「…ありがと」
「いーえ。えっと…」
「……あ、俺…佐野。佐野、京夜」
よろしく、と目を腫らしながらも微笑んでくれた佐野さんがなんだかとても可愛らしくて。
何ていうか、こう、あれだ。孫を見るおばあちゃんの気持ちだ。
「佐野さん」
「京夜でいいよ。4つしか違わないし。あと敬語も使わないでほしいな。苦手なんだ」
「あ、うん。京夜ね。私は稲川香菜。香菜でいいよ。京夜はおじいさんの教え子だったんだって?」
「…うん。色んなこと教えてもらった。講師、なんてもんじゃないんだ、俺にとっては。先生は俺の先輩みたいなもん」
あれが男泣きというものか分かる、というか男泣きの見本のような感じだ。
『…すごい泣いてるね』
「おじいちゃんの教え子だったんですって」
『……ふーん…』
こんな豪快に泣くなんて、きっとむさ苦しい男子なんだろう。そんなことを勝手に思いながら煮物の火を消した。
そのとき、私はどんな人かすごく気になって、どうしても見てみたくなった。
どうしてかは分からなかった。
『少しだけ…』
襖を少しだけ開けて、様子を伺う。
隙間から部屋を見て私は目を見開いた。
お父さんと同級生らしき人に慰められながら泣いていたのは、お葬式には合わない金髪のお兄さん。
でも、そんなことはどうでも良かった。
だって、お兄さんの泣いている横顔がすごく綺麗で、儚くて、今にも消えてしまいそうだったから。
あんなに綺麗に泣く男の人がいるなんて、初めて知った。
「…?娘さん?こんばんは」
男の人に見惚れていると、隣にいた同級生らしき人に声をかけられた。
突然でしどろもどろになっていると、泣いている方も私に気付いたのか、袖でごしごしと目を拭いた。
『あっ、待って。擦ったら腫れちゃう』
泣いた後に目を擦ると周りから見てもとても痛々しくなるのだ。
私はその人にそうなって欲しくなくてハンカチを渡し、目を冷やすための氷を取りに行く。
「…出来た娘さんですね」
「いやいや…ははっ」
「京夜、さっき言われたでしょ。目擦らないの」
「………ん…」
キッチンで袋に氷を詰めながらそんな会話が聞こえてくる。
話を聞いてるとまだ目を擦っているみたいだ。
料理の盛りつけをしているおばさん達の横で、急いで氷を詰めた。
「はい、氷」
「…ありがと」
「いーえ。えっと…」
「……あ、俺…佐野。佐野、京夜」
よろしく、と目を腫らしながらも微笑んでくれた佐野さんがなんだかとても可愛らしくて。
何ていうか、こう、あれだ。孫を見るおばあちゃんの気持ちだ。
「佐野さん」
「京夜でいいよ。4つしか違わないし。あと敬語も使わないでほしいな。苦手なんだ」
「あ、うん。京夜ね。私は稲川香菜。香菜でいいよ。京夜はおじいさんの教え子だったんだって?」
「…うん。色んなこと教えてもらった。講師、なんてもんじゃないんだ、俺にとっては。先生は俺の先輩みたいなもん」