【短】ウラハラ彼女
どうしてここまで僕が情けをかける?
なんで……
「ねえねえ、三橋くん」
「…ん?」
「あたしが怪我したらまた手当てしてね!」
傷口に貼った絆創膏をさすって、心底嬉しそうに。
そして無邪気に笑う彼女を見て気付く。
……ああ、そうか。
彼女が僕の目の届く範囲でしか問題を起こさないからだ。
教師にも、生徒にも。
思えば彼女は僕以外には迷惑をかけていない。
それを狙っているのかいないのか……
とにかくこの女は、要領がよくて抜け目がない。
言ってしまえば器用なやつなんだ。
僕はその時、ようやく気が付いた。
彼女の行動。
それは全て、計算の内の出来事で。
僕はその笑顔に、すっかり騙されていたのだった。