【短】ウラハラ彼女
さっきよりも雨足が速くなった気がする。
地面を打つ音が耳について離れない。
「……」
こんな時、いつもならさっさと帰ってるはずなのに。
昇降口を出たところで足がはたり、と前触れもなく止まった。
ピチョン、ピチョン――
どこから聞こえるのか、妙に響く水の滴る音。
「何してんの」
まるでバケツに溜まった水に一滴、一滴とゆっくりと。
滴り落ちるようなその、独特の音を記憶しながら目の前で蹲るそいつにゆっくりと声をかけた。
「み、はしくん…」
見た限り、雨宿りをしているのだろうか。
にも関わらず、全身ずぶ濡れで足を抱えている。
さも構って欲しそうな姿で顔を上げるのは、久住果歩――彼女に間違いない。