【短】ウラハラ彼女
「傘は?なに、持ってないの?」
「あ……え、へへ。うん、忘れてきちゃった」
弱々しく笑う彼女に、深くため息を吐いた。
久々に会った…感じはあるのだけども、それより呆れと驚きの方の印象が強すぎて敵わない。
来ていたブレザーをおもむろに脱ぐ僕を不思議そうに見上げた彼女。
その顔面から投げるように被せると「ぶふっ!」と何とも可愛げのない声を上げた。
それを聞いてつい笑ってしまう。
と同時に、どこかホッとしていることに気付く。
「…貸してくれるの?」
「他に何があるんだよ。いらないんなら返せ」
「……ううん。嫌だ、返さない」
自分の一回りも二回りもブカブカなブレザーを羽織り、抱きしめるように、キュッと握りしめて笑う。