【短】ウラハラ彼女
――と、間一髪。
その襟首を掴んで引き寄せた。
「ハァ、ハァハァ…」
ほんの4、5メートルの距離にこんだけ息切れることって、結構貴重じゃないか。
…そう前向きに考えてみても、やっぱり巻き込まれた迷惑心には勝てない。
今非常にこの女を恨んだ。
おまけに、
「なんで止めるの?」
……なんて。
思いのほか高くて女の子らしい声で、不思議そうな顔をして言うもんだから怒鳴る気にもなれず。
脱力感に襲われた。
あーやっぱ、見誤ったかも。
素直に落としとけばよかった。
はー、と息を大きく吐く。
「バカだろあんた。死ぬなら時と場所選んで死んで」
冷たく言い放つ僕に、きょとんとした彼女。