【短】ウラハラ彼女
震える声。
何を言おうと、されようと。
全部流していればいいと思っていた。
けれど一瞬で、どうすればいいか分からなくなった。
「離れたのに。三橋くんが迷惑だからって。
あたし、自分を殺して。なのにこんなことされちゃったら…
期待、するよぉ…」
涙ぐんで鼻をすすり出すのを多少なりとも面倒だと思いながら、彼女に向き直る。
おそらく、涙を必死で堪えているであろう噛みしめる唇。
嗚咽を漏らしつつも何とか言葉にしようとしているのだろう。
「いつまで意地張ってんの」
僕だって人のこと言えた義理じゃない。
道理を教えられるほど立派な人間でもない。
何もかも見て見ぬ振りを貫き通した単なる“嘘つき”。
でもまあ……
それはお互い様だ。