【短】ウラハラ彼女
「だけどね、あたしにとって三橋くんは全部初めてだったし、諦めたくなかった。
このまま終わらせたくない。
だから、無茶をしても何でもいい。
ただあたしの姿が、あの人の目に留まれば良かったの。」
“あの人”と。
言いながら僕を力強く見つめてくる彼女の好意は本物だと、痛いほどに伝わってくる。
人に興味もなく、他人を拒み退けてきた僕が……
真っ直ぐで、直球で、本能のまま行動する。
そんな必死すぎる彼女の純粋な想いを、受け取ってもいいのだろうか。
もはや余裕のない僕に、悩むまでの余地すらなかった。
大きく、盛大にため息を一つ、零す。
彼女の突飛な発想にはつくづく驚かされる。
本当にあんたは馬鹿だ。
ついで僕は、大馬鹿野郎に違いない。