【短】ウラハラ彼女
「あんたが、好きだよ」
果たして、届いただろうか。
「……っは、え…!?
ちょ、あの、もっ、もう一回っ…お願いします!!」
…残念。届かなかったらしい。
僕としてもそれは困る。
彼女の前で二度もこんな羞恥を晒すのはゴメンだ。
弱みを握られるのも好かない。
けど、まあ……
今だけ仕方ない、か。
彼女に歩み寄り、頬を両手で挟み込む。
初めてだからどうしたらいいか分からないけど。
彼女に確実に伝わる僕自身のやり方で。
「久住が……好きだ」
「…っ、今…あたしの名前……っんむ」
聞いてなんかやらない。
あんたにこれ以上、転がされて堪るか。
そう意を込めて彼女の口を塞いでやる。
唇から伝わる、途切れた一瞬の息に興奮が掻き立てられる。