【短】ウラハラ彼女
腕を枕に、横たわって空を仰いでいるあの人――三橋恭平くんの姿。
その横顔はやっぱり見惚れるほどキレイで、ここまで人に入れ込むなんて思ってもみなかった。
恥ずかしくて、一旦ドアを閉めて薄暗いその場にしゃがみ込む。
ドキドキが止まらなくて、このまま彼と目が合ってたらあたしは失神さえしてしまえる自信がある。
だけど……と不意に思った。
もしあの時、あたしが素直に校舎裏へ行かなかったら。
もしあの時、いつもみたいにさっさと中に入っていたら。
もしあの時、偶然にも空を見上げていなかったら。
あたしはきっと、今もこの幸せな一時を味わうことはなかったかもしれない。
ほんの些細な日常とは違った行動が、偶然を通してあたしに教えてくれた。