【短編】雨上がりのキスは傘に隠れて。
「おい、聞いてんのかよ。」


「へっ?」


「間抜けな声、出してんじゃねぇよ。」


「ま、間抜けって何よ。人が思い出に浸ってたと言うのに……。」


そう言いながら和久が頼んだポテトサラダを一気に食べると


「お前さぁ、俺がポテトサラダ好きなの知ってるだろ?」


「知ってる。だから食べてやった。」


「なんそれ。」


口ではそう言いながらも大して怒るでもなく追加のポテトサラダをオーダーする和久。


和久はいつだってそうだ。


口は凄く悪いけれど、結局、優しい。


私のする事を何だって許してくれる。


子供の時からずっとそう。


おもちゃなんか取り合いになっても譲ってくれるのは必ず、和久。


いつだって私は譲って貰ってた。


しゃあねぇなぁって文句言いながらも、私に譲ってくれてた。


ある程度、大人になってもそれは変わらなかった。


私が中沢さんと付き合うまでは……。




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