選択恋愛

数々の彼との出会い

「そう言えば、先輩もあと1ヶ月で完全に引退ですね。」

「あー確かにそうだね。いやー…早いもんだね!3年間ってさ!」

「とうとう受験生ですね。」

「……そ、そんな何か企んでるみたいな顔で言わないで!」

さえぽんがニヤついた黒い笑顔で見てくる。

「良いですね~。大学生ですよ?自由ですよ?最高じゃないですか!」

「まぁ、そうだねー!」

「大学生になったら彼氏、作ってくださいよ!あたしがその彼氏ジャッジしてあげます。」

「出た。さえぽんの顔面偏差値ジャッジ!」

……彼氏ね。
今すぐにだって欲しいのは欲しいけどね。
出来ないのが現実なのよ。

「あれ?先輩、あれ結城ちゃんと奈緒子ちゃんじゃないですか?」

改札の近くにいる同じ制服を着た子に目線を移す。

「あ、本当だ。…でもあの隣の男、誰?」

背が高くて、茶髪で、なんかチャラそうな男の子。
でも、同じ制服を来てるのだからうちの高校の生徒なのだろう。

「やっほー。結城ちゃん、奈緒子!」

「あ、先輩!お疲れ様です。」

可愛らしく、ペコリと頭を下げて挨拶をしてくれる結城(ゆうき)ちゃん。

「なんだ、彩也か。」

3年間以上の付き合いということもあり、敬語も無しでため息をつく井之花奈緒子(いのはな なおこ)。

「ねぇ彩也ー!お腹空いた。」

「はぁ!?」

突如きらきらした目を向けながらお腹空いたと言い始める奈緒子。
流石私の後輩だ。

「2つも年上のうちに買って来いと?」

「だってどうせ、焼き鳥買うんでしょ?」

「……バレた。」

「同じのでいいから買って?」

「へいへい………人使いの荒い後輩だな。」

全く…恐ろしいわ。

「先輩!電車の時間なんで先失礼しますね!」

「おー、さえぽんまた明日ね!」

とりあえず、さえぽんを見送った後に改札の隣のコンビニで唐揚げ棒を買った。
私の好きな焼き鳥が売り切れだったので……。

「売り切れてたから唐揚げ棒にした。」

「唐揚げ棒だー!」

奈緒子に渡すとわぁ!っと喜んでいた。

「結城ちゃんと分けて食べな。」

私も自分の分を食べようと唐揚げ棒を口元に持っていく。

食べようとしたところで何かが目の前を横切る。
気が付けば唐揚げが1つ無くなっていた。

「え……?」

「唐揚げうまっ!」

隣にいたのは先程奈緒子達と一緒にいたあの男の子。

「もう1つ俺にくんねぇかな?」

馴れ馴れしく話し掛けてくるその男の子。

「別に良いけど……。」

「お、さんきゅー!」

また1つ私の唐揚げが消えた。

てかこの子……何?
私の唐揚げ食べられた。

「ちょっと何彩也の食べてんの?」

「旨そうだったから。」

「先輩の食べないでよ!」

「は?先輩?」

私の制服を見る男の子。
そして私の校章を見つけじろじろと見る。

「うわっ!先輩だったんすか!?すいません!!俺先輩だって気付かなかった!」

……今頃!?
さっきから二人が先輩って言ってたのに気付かなかったのか!

「あ、はい、3年です。」

「まじびびったわ!先輩だったとはね。」

声でけぇよ!
そして予想通りチャラい。

「てか、先輩にさっきの聞いてみっから!ぜってぇ先輩わかっかんな!?」

「……な、何?」

「男が夜、女と二人で歩いててワオーー!ってなるってどういう事かわかりますよね!?」

こいつ、初っ端から変な事言ってるし。

「わかるね。」

「ほーら、見てみろ!」

なんつー会話だよこれ。

でも、この子面白いね。

「あ、そろそろ電車来るんで帰りますね!先輩さよなら!バイバイ!」

結城ちゃんが改札にパタパタと走って行く。

「先輩先輩!」

例の男の子が話し掛けてきた。

「良い女って居ませんかねぇ?」

「……それうちに聞く!?」

良い女何て聞かれてもわかんないわ!!
でもやっぱりこの子面白い。
印象が強過ぎる。

「おい!彩也に近付くな!」

何故か叫びながら抱き着いてくる奈緒子。

「今俺先輩と話してただけじゃーん!」

「もう帰れ帰れ!」

「奈緒子も早く帰んないとお母さんに怒られるよ?」

「あー!!もうこんな時間!帰る!」

バタバタと周りが慌ただしい。

「うちもバスそろそろだな……。」

「んじゃまた明日ね!」

奈緒子と挨拶を交わし、階段を降りようとした。

ふと、後ろを振り返ると男の子の姿はない。

「ねぇ、さっきの男の子は?」

帰ろうと階段を降りていた奈緒子を呼び止めて聞いた。

「何か友達のネックレス探さないとなんないからって言ってたよ?」

もう行ったのか。
面白い男の子だったな。
なんか印象強過ぎるし!

名前もどこに住んでるのかも知らない子。
ただ1年生であり、声がでかくて、煩くて、チャラくて、変態で……かっこいい。
それだけしかわからなかった。

「まぁ、いいか。」

刺激的な帰り道だったな。
そんな程度だった。

ふっと笑いながら帰る方面のバスへ乗った。




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