選択恋愛
「ぎゃあああああ!!!」

朝から家中に叫び声が響き渡る。

「寝坊したぁぁぁ!ばっバス!!!」

家の中を走り回る私。

「何やってんの!」

「お母さん起こしてくれてもいいじゃん!!」

ご飯をかき込み、洗面所へ。

「お母さん、何回もあんたの事起こしたんだけどねぇ。」

公開文化祭から1ヶ月が過ぎた。
11月。
すっかりと空は寒空へと変わった。

時間は早いものだなんて最近考える様になった。

歯磨きを終え、顔を洗い、カバンを持つ。

「いってきまーす!」

走ってバス停へ向かった。
そして、1分でバス停へ到着。



………が

「…バス……来ない。」

7:30の予定のバスが来ないのだ。

現在の時刻は7:39。
ちなみに次のバスは7:40。

駅で最終が8:05の学校行きのバスに乗り換えなければならないのだが、駅までここから30分はかかる。

「………遅刻だ…。」

現在7:42。
やっと7:40のバスが来た。

どっちにしろ遅刻は確定。

「はぁ……。」

小さくため息をつく。

とりあえず、HR長にメールで遅刻する事を伝えた。

最悪だ…。
センター試験3ヶ月前なのに何という事をしてるんだ。

そんなことを考えているうちに駅に着いた。

スマホの画面を点けて、時間を確認すると

「……8時………7…分。」

最終バスが行ってしまった。

うちの学校は山の上の方にあるので、駅からバスで20分かかる。
徒歩だと2時間はかかる。

「はぁ……最悪だなぁ。」

駅の階段を上り、広い憩いの場に出た。

ふと目の前を見ると、誰かが手を振っている。

眼鏡をかけていないから顔が見えないが、うちの学校の制服なので、坂野生である事はわかった。

近くに行ってみようかな。

「せんぱーい!」

「あ、本谷君!!」

手を振っていたのは例の男の子の本谷君だった。

「先輩何してるんすか?」

「あー、寝坊してバス乗り遅れ?」

「まじすか!」

そういうこの子は友達と駅で何をしているんだ?

「本谷君はどうしたの?」

「あー俺は面倒臭いから午後から行こうかなって。」

何という事だ。

まさかうちの目の前にこんな漫画のような事をする人物が現れるとは…。

「先輩はどうするんすか?もうバス無いっすよ?」

「うちはバス待ってるなら歩いた方が早いかなって…。」

「え!やば!偉いっすね!」

遅刻してる時点で偉くないけどね。

「一応受験生だしね。」

「あーなるほど。」

「んじゃあそろそろ行くね!」

とは言ったけど、正直何故かまだ一緒に居たかった。

お昼に行けばいいかという考えも少しした。

けれど、私は受験生だから学校に行かなければならない。

「んじゃ気を付けて下さいね!」

「ありがとう!じゃね!」

離れたくない。
心の奥が痛む。

……何故?

彼の印象が強いから?
かっこいいから?
面白いから?

私は歩き続けた。
彼の事を考えながら。

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