蜀宮廷日記
それから、正式に劉禅の側仕えになった真由姫であった


劉禅と敦姫はそんな真由姫を自然と仲間のように受け入れた・・・。


敦姫は、年の頃は真由姫より3歳上であったがしとやかな面と意外に賑やかな面が交錯する女性でもあった・・・。

彼女は趙雲の娘であったが、養女であった・・・。

劉禅は、皇帝ではあったがまだ若く、歳上の敦姫に確かになつくのは自然にも思えた・・・。


そんな時であった。


「安国様?」


「なんだまゆじゃないか。」


安国とは関興の字である。


久しぶりの再会であった・・・。


少女の頃、こんなことがあった。


ある時、関興が郊外まで武芸の稽古に出かけ、戻って来た時のことであった・・・。真由は、丁度所用で関羽邸に来たところであった。

彼が愛馬を厩舎に戻そうと中へ入って来た。丁度真由は屋敷から所用を終えて、立ち去るところであった。

「こんにちは」

「こんにちは」

二人はまだ挨拶程度を交わすくらいの間柄であった。だが真由は少し意識はしていた・・・。


そんな時である、突然馬が棹立ちになった。
いななく、馬・・・。関興はかろじて手綱を持ち、抑えようとしていた。


そんな時である


すっと横合いから、来て


「どう、どう。」


とあやす人影・・・。

真由であった。


「この馬は寂しかったんでは。」


「何故そんなことがわかる?」


「首筋を触って、感じました。関興様と離れるのが寂しかったんですよ・・・。」


「ふーん、そなたよく馬のことがわかるな。」

「幼き頃から馬は友達でしたから。」


彼女は馬を鎮めて、関興に戻し、立ち去ろうとした。


「待て。」


関興は、自然と真由の腕をとっていた。


「じゃあ、そなたは乗馬も上手いのか?」


「多少は。」


「じゃあ、今度は私と競走しよう、よいな?」


関興は女性に助けられた格好になったために、ちょっと意地になったらしかった。


が、握った手を意識した瞬間・・・。


か細い、美しい指・・・。


彼は、女性を意識せざるを得なかった。
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